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この記事では、介護市場の人材不足について考えます。なぜ介護業界は人材不足に陥っているのか、そして現場の声を見ながら、その原因を探っていきましょう。その中に、人材不足を解消するためのヒントが隠れているかもしれません。
多くの業界で人手不足が叫ばれて久しいですが、特に介護業界の人材不足は深刻となっています。求人情報を見ると介護事業所の求人を目にすることが多いのではないでしょうか。
介護の現場における人材不足は、「少子高齢化」がまず大きなものとして挙げられます。2018年の高齢社会白書(内閣府)によると、日本の人口のうち27.7%が65歳以上の高齢者が占めているというデータがあります。さらに、少子化も進んでいることから介護職のなり手も減り、より人材不足が深刻化していくことになります。経済産業省の試算によると、2035年には介護従事者の不足は79万人にも上ると予想されています。
また、女性の社会進出、核家族化などが進み、昔のような「高齢者の面倒は家族がみる」というスタイルが成立しなくなってきた、という点も人材不足に拍車をかけている一つの理由といわれています。
他にも、介護の人材採用の難しさや給与の低さ、職場の人間関係による離職など、さまざまな原因が重なり合うことで介護業界の人材不足を解消するのが非常に難しいものとなっています。
実際に現場では人材不足についてどのように感じているのでしょうか。さまざまな声を集めてみました。
人の入れ替わりが激しい
うちの施設は今人手不足です。最初は普通に回ってましたが、派遣は施設長が切ったり、向こうが更新しなかったり、正社員も辞めていきました。やめていく理由は様々で、給料が安い、夜勤の無い所へ、結婚して専業主婦になるから、定年…。派遣さんももっと条件が良いところへとか、もっと楽なところへ、という感じです。
周りに新規事業所ができることで、より人材不足が加速
人材不足している現状で新規事業所が出来るとますます人材が不足し、介護サービスを一時休止にしたり、受け入れ利用者様を減らす等になっている話を聞きます。
人材育成にも手が回らない
人手不足のため、資格や経験が無い人材の採用をやむなくしてしまうが、仕事が出来なくても給与、賞与は発生してくる。人件費は重いが、サービスの質の向上はできているのか問題になってくる。業務に追われ、人材育成どころではない。
※参照元:「介護人材に関するアンケート調査結果」(http://www.pci-area.tonami.toyama.jp/sougoujigyou/chiikimicchaku/kaigojinzaianketo.pdf#search='人件費は重いが、サービスの質の向上はできているのか問題になってくる。業務に追われ、人材育成どころではない。')
介護現場の人手不足解消については、さまざまな方法が考えられるものの、中でも最も注目されているのが「外国人介護士の受け入れ」です。
徐々に外国人介護士の受け入れ数は増えており、EPAに基づく介護福祉候補者の受け入れについては平成20年度から平成30年度までの受け入れ数は4,302人、これまで808箇所の事業所での雇用実績※があります。
人手不足の解消のため、外国人介護士の受け入れを検討してみてはいかがでしょうか。
※2:平成30年度 厚生労働省 老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の受入れに関するアンケート調査」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf)※平成30年10月1日時点調査
人材不足の原因やその対策方法について、より詳しくまとめたコラムを紹介します。人材不足に悩む介護事業所の方は特に、参考にしてみてはいかがでしょうか。
介護業界の人材不足は、少子高齢化」が大きな要因となっています。現在は人口の4分の1が高齢者(65歳以上)という状況となっており、今後はより高齢者の割合が増えていきます。その反面、給与面の低さやネガティブイメージなどの理由により、人手が足りないけれど採用ができない、という状況に陥り、より人材不足が深刻化しています。なぜ介護業界の人材不足がここまで加速してしまったのか、詳しく見ていくことにしましょう。
介護業界の人材不足は深刻な状況ではあるものの、対策方法が全くない、ということはありません。例えば現状の労働環境を改善して人材の流出を防ぐ、職員の負担を減らすために介護用品を購入する、そして外国人介護士の受け入れを行うなどさまざまな方法が考えられます。
そこで、具体的にどのような対策ができるのかを考えてみましょう。近年注目されている、外国人介護士の受け入れについても、事例を交えて詳しくご紹介していきます。
高いコミュニケーション能力が求められる介護の現場において、言語を確実に習得していることは欠かせません。介護の対象となる人物と対話できるだけでなく、現場の職員とチームとして働く必要があるのです。仕事内容においても、記録したりカルテを読んだりなど、多方面から言語能力が求められます。日本人職員と同等に職務をこなすのは難しいといえるでしょう。また、国家試験の合格率も低く、ここでも言語に対するハンディキャップが見受けられます。技術としては不足がなくても、言語の面で苦労する外国人介護士が多数いるのが現状です。
少子高齢化社会を迎えたことで深刻な労働人材不足を抱えている日本。政府は外国人介護士を受け入れることで不足している労働力を補おうと試みていますが、高齢化社会に悩まされている国は多数あり、国をまたいで外国人介護士獲得の競争が勃発しています。外国人介護士が日本で働く際に大きな壁となる言語の習得ですが、英語圏で働けば言語の習得に手間取ることはありません。また、他国の方が外国人介護士を受け入れる体制が整っている場合が多く、日本は外国人介護士から選ばれない国になってきてしまっています。外国人介護士の獲得競争に乗り遅れないために、早急な雇用条件の見直しが必要です。
日本社会の労働人口の減少に対して、外国人労働者を活用することで問題解決を図ろうとすれば、当然ながら外国人労働者が意欲的に働ける環境を整え、積極的に日本社会へ貢献してくれる職場を提供することが大切です。
特にネットやSNSが発達した現代では、外国人労働者の間でも情報共有が活発に行われており、施設側の対応の悪さや差別問題といったマイナス情報は即座に拡散され、有能な人材ほど遠ざかってしまう原因になります。
そのため、外国人労働者にとって魅力的と思える職場環境を実現できるよう、多方面での取り組みを行っていくことが重要です。
在留外国人にとって、短期的にでも日本を離れることは常に再入国が難しくなるリスクを伴います。
外国人介護士など適正に在留資格を取得している外国人に対しては、事前申請によって再入国が簡単になる「再入国許可」といった制度も用意されていますが、それでも想定外のトラブルの可能性は0でありません。
加えて、外国人の出入国管理に関しては、日本社会との間で人権問題や国際問題にまで発展することもあり、外国人労働者とより良い関係を築くためにも、偏見や差別感情にとらわれることなく、互いを尊重し相互理解を深めていくことが重要です。
介護・医療の業界では、団塊の世代が一斉に後期高齢者となる2025年問題を懸念していますが、実際はそこから先もずっと要介護者の増加や介護士の人材不足といった問題は続いていくことになります。むしろ、2025年問題は介護業界の深刻な人材不足のリスタートでしかなく、根本的な問題解決には中長期的な対策の考案や実施が欠かせません。実際、政府の発表では、2035年には2025年の介護人材不足が2倍以上に悪化すると見込まれています。そのため、介護施設や介護サービス事業を営んでいる人にとって、外国人の雇用環境の整備や異文化に対する意識の向上など、今から5年後、10年後、15年後を見すえた対策を進めていくことが大切です。
中長期的な介護業界の人手不足改善策として、「潜在介護士」の活用が推進されています。潜在介護士とは、介護福祉士の資格取得者でありながら、何らかの事情で介護業界に従事していない人を指し、その中には専業主婦/主夫として暮らしている人から、他業種で会社員をやっている人、または引退して無職となっている人まで様々な人がいます。
ただし、将来的な介護人材ニーズの高まりを考える上で、潜在介護士の雇用は重要なカギといえますが、必ずしも潜在介護士だけで問題が解決するわけでもなく、多角的な対策の実施が重要です。
人材不足が深刻化する介護業界において、適正な人材マネジメントによって所属している介護職員のモチベーションを向上させ、離職率を低下させることは、介護業界全体にとって最重要課題の1つとされています。
単に業務効率化を優先して適材適所の配置を考えるのでなく、個々の介護職員が誇りや意欲を持って業務に当たれるよう、職員の内面にもアプローチすることが人材マネジメントのポイントです。
また、外国人介護士のように、特別な背景を持っている人材について適正なマネジメント方法を考えることも、介護人材の拡充を目指す上で大切です。
介護士の数が不足している以上、介護に携わる個々の人材の育成を行って、介護の品質を向上・維持させることが非常に重要となっています。
介護業界では特に、チームを率いて高品質の介護を実践するリーダー人材の育成が重視されており、またチームリーダー自身が指導者として新人介護士や外国人介護士の育成に当たることも少なくありません。
そのため、適切なリーダー人材の育成を行いつつ、各メンバーに対しても、それぞれの介護能力や経験に応じた育成プランを考案することが必要です。
まずは介護人材の育成のポイントについて把握しておきましょう。