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コラム8:潜在介護士について徹底解説

介護業界の人材不足を解消するために、政府は潜在介護士の活用を検討していますが、それだけで本当に介護士の人手不足が解消するのでしょうか。このページでは潜在介護士に期待される効果や、潜在介護士の問題点などについて解説しています。

潜在介護士とは?

資格を持ちながら介護士として働いていない人が多い

潜在介護士とは一般的に、介護福祉士としての資格を取得していながら、様々な事情で介護業界で従事していない人のことを指します。

潜在介護士には、過去に介護士として働いていたものの、何らかの理由で介護業界を去った人から、資格だけは取得しているものの実際に介護福祉士として勤務経験のない人まで幅広く含まれていることがポイントです。また、厚生労働省の実態調査によると、平成27年3月時点で有資格者でありながら介護職業務に従事していない人は、全体のおよそ6割程度にも上ると発覚しました。

介護業界の人材不足や、介護士の不足はすでに深刻な問題として取り上げられており、2025年問題やそれ以降の介護需要に対する取り組みは、現時点で色々と始められています。そのため、日本国政府や自治体としても、潜在介護士を活用することで、介護業界の人手不足を解消しようというプランが検討されています。

※参考サイト:厚生労働省|介護福祉士の資格等取得者の届出制度(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158837.html

潜在介護士になる理由とは?

介護福祉士の資格取得を叶えていながら、介護士として働いていない人の理由は様々です。そのため、潜在介護士の活用を考える場合、まずは潜在介護士の実態について把握しておくことが欠かせません。

潜在介護士の割合は専業主婦/主夫が最も多い

三井住友フィナンシャルグループに属する株式会社日本総合研究所が、「平成29年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業」として、全国の介護従事者や潜在介護士に調査を行ったところ、潜在介護士の職業として最も多いものは「専業主婦/主夫」であるという結果が得られました。

過去に介護業界で就業経験のある潜在介護士のうち、約34%が専業主婦/主夫として生活しており、就業経験がない潜在介護士でも約25%となっています。また、この傾向は特に女性介護士に顕著とされ、家事や育児を理由に介護業界を離れた女性も少なくないと予想されます。

男性に限定して見れば、50代以下では他の企業で会社員として従事している人が多く、60代以上では無職という結果も得られました。

潜在介護士の4割程度は介護業界で働きたい?

同調査によれば、潜在介護士のうち全体のおよそ4割の人が、再び資格を活かして介護業界で働きたいと希望しています。また、特に30代以下の若い世代で見れば、およそ半数以上が将来的に介護業界で働きたいと考えており、一方の60代以上でも約3割の人が就労意欲を見せています。

潜在介護士の再雇用を促すには?

介護福祉士として働きたいと希望している人が多いにもかかわらず、有資格者の大部分が潜在介護士として暮らしているということは、そもそも彼ら/彼女らが働きにくい環境があったり、働けない事情を抱えているということが考えられるでしょう。

専業主婦や子育て世帯であれば、働きたくても家事や育児で労働時間の確保が難しいかも知れません。また、一定以上の年齢であれば、低賃金など給与待遇の面で介護福祉士を選べないという人がいるかも知れません。その他、長らく介護業界を離れていた人が、復職したくても実際に働けるか不安で、前に進めないというケースもあるでしょう。

そのため、潜在介護士の再雇用を適正に促すには、そもそも彼ら/彼女らがライフワークバランスを考えながら意欲的に働ける環境や社会風土を、官民が協力して実現していくことが求められています。

※参考サイト:株式会社日本総研|介護人材の働き方の実態及び働き方の意向等に関する調査研究事業(https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=32551

行政による潜在介護士の活用促進

厚生労働省では、潜在介護士の再就職や再雇用を後押しするために「介護福祉士の資格等取得者の届出制度」を設けています。

介護福祉士の資格等取得者の届出制度とは?

介護福祉士の資格等取得者の届出制度とは、何らかの事情で介護業界を離職する介護福祉士に対して、全国の都道府県福祉人材センターへ氏名や住所、就業状況などを届け出るよう、法律によって努力義務を課したものです。あくまでも努力義務であるため、届け出を行わなかったからといって罰則や不利益はありませんが、介護福祉士の円滑な再雇用や介護業界の人材ニーズへ対処する制度として、潜在介護士へのアナウンスが行われています。

なお、届出を行える人は、努力義務対象者である介護福祉士の他にも、介護職員初任者研修や介護職員実務者研修といった関連研修の修了者が含まれます。

介護事業者にも届け出の支援協力が求められている

届出制度は、単に潜在介護士の就労支援を行うだけでなく、地域や事業者を含めた三位一体として介護業界の人手不足へ対処していく制度です。そのため、例えば介護施設から離職する介護士や、養成学校の学生で介護業界への就職を希望しない学生に対して、介護事業者や学校関係者などからも本人らへ福祉人材センターへ届け出るよう促すことが求められています。

潜在介護士だけで介護業界の人手不足解消は困難

働きたくても働けない理由は無視できない

超少子高齢社会の日本において、要介護者は年々増加しており、経済産業省の推計によると、2025年に介護人材の供給数215万人に対して人材需要は247万人、さらに2035年には227万人の介護人材に対して必要な人材数は295万人と、およそ70万人近い人材不足が見込まれています。

一方、厚生労働省の発表によれば、平成30年9月末時点で介護福祉士の登録者は約162万人とされており、その中には多くの潜在介護士も含まれます。

そのため、仮に潜在介護士の全員が介護業界へ復職・就職すれば、介護人材の不足は大きく改善するかも知れません。しかし、そもそも本当は働きたいと考える潜在介護士が少なくないという事実が、全員の就職が容易でないという現実を証明しており、さらに50代、60代以上の潜在介護士がやがて要介護者になっていくケースも考えなければなりません。

※参考サイト:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット|高齢者を支える介護人材不足について(https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-shakai-mondai/kaigojinzai-fusoku.html#:~:text=%E5%B9%B3%E6%88%9028%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%81%AE%E7%B4%84,%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99(%E5%9B%B35)%E3%80%82

※参考サイト:経済産業省 経済産業政策局 産業構造課(2018 年4月9日)「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会 報告書」(https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180409004/20180409004-2.pdf

※参考サイト:厚生労働省|ページ6:介護福祉士の登録者数の推移(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-kaigo-fukushi1/shakai-kaigo-fukushi6.html

※参考サイト:厚生労働省(平成31年3月18日)「介護分野の現状等について」(hhttps://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000489026.pdf

将来的な介護人材の不足解消には外国人介護士の活用も重要

現実的に潜在介護士だけに頼った取り組みでは人手不足問題の解決が難しいと考えられる以上、厚生労働省や経済産業省では潜在介護士だけに頼るのでなく、様々な方面から介護人材のニーズに応じた介護士の確保を検討しています。

平成30年9月に厚生労働省が発表した資料「福祉・介護人材の確保に向けた取組について」の中では、その方法が明示されており、「介護分野における外国人の受入れ」が具体策として提唱されている点も重要です。

また、海外から介護人材を受け入れるための対策として、資格取得を目指す外国人留学生への修学資金の貸付推進や、外国人労働者の日常生活相談窓口の拡充といったものも挙げられており、今後は介護事業者と行政が一体となって、外国人介護士の受け入れ環境を整えていくことが一層求められていくでしょう。

※参考サイト:厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室(平成30年9月6日(木))「福祉・介護人材の確保に向けた取組について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000363270.pdf

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