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コラム3:外国人介護士の研修に関する課題

労働人材不足を解消すべく受け入れられるようになった外国人介護弁護士ですが、実際に現場働けるようになるにはさまざまな問題をクリアする必要があります。以下では外国人介護士が抱える課題について解説します。

人材不足を解消すべく行われてきたこれまでの受け入れ制度

EPA介護福祉士候補者が在留資格「介護」の対象に(2017.9.1〜)

2008年からEPAにより看護師・介護福祉士候補者の受け入れが開始し、現在ではインドネシアやフィリピン、ベトナムの3か国と協定を結んでいます。EPA介護福祉士候補者とは、2008年から始まった日本の介護施設で就労・研修を受けつつ、介護福祉士の資格を得ようと勉強している外国人労働者に与えられる在留資格です。日本で認められている在留資格の中で最も古い制度になります。在留期間は最長4年ですが、介護福祉士に合格した場合は、在留資格「介護」を利用して働き続けることが可能です。

在留資格「介護」とは2017年9月1日から認められるようになった在留資格で、介護福祉士の資格を持っているのが対象となる条件。一般的には、まず外国人留学生として入国し、日本の介護福祉士養成施設に2年以上通った後、介護福祉士の資格を取得するのが一連の流れです。介護福祉士の資格を取得すると在留資格を「留学」から「介護」に変えることができ、正式に介護福祉士として働けるようになります。なお、在留資格「介護」には受入国や在留期限に制限がないため、条件を満たしてさえいれば、日本で働く更新手続きをすることが可能です。

「外国人技能実習制度」に介護分野での受け入れを導入(2017.11.1~)

日本はこれまで多くの外国人実習生を受け入れてきましたが、その中でも人手不足を解消するための制度として外国人技能実習制度が知られています。外国人技能実習制度は、もとは日本で技術を習得したいと思っている実習生を呼び込み、実際に働きながら技術を身につけてもらい、帰国後母国の技術発展に役立ててもらうという試みでした。ところが、表向きには上記のような方向性が示されていますが、実際は日本の求人をしても人が来ない介護現場に多数の外国人実習生が送り込まれているのが現状です。あくまで名目としては国際交流であり、人材不足を解消するための制度ではないと宣言してしまっているため、EPAの枠内でのみ受け入れを執り行い、受け入れ体制も消極的なものにせざるをえませんでした。外国人介護士が日本で就労し続けるためには、4年間滞在して介護福祉士の国家試験に合格しなければならないという厳しい条件があるのもそのためです。

「特定技能」という外国人が日本で働ける在留資格が新設された(2019.4.1~)

外国人が日本に住み続ける際に必要となる在留資格(ビザ)。中でも働くことを目的にした在留資格を「就労ビザ」と呼びますが、どの業種でも就労ビザがあるわけではありません。外国人が日本で働くことを認めた「特定技能」という名前の在留資格が2019年4月に新しく設けられました。

特定技能が成立した背景には日本少子高齢化社会が大きく影を落としており、働き手が大幅に減少していることが関係しています。特定技能は「国際交流」を名目としていた技能実習とは異なり、「人手不足の解消」を目的に据えた制度です。

そのため、外国人労働者にとって働きやすい環境を整えるべく、受け入れ国の制限を無くしたり、雇用と受け入れ企業との直接契約を認めたりしています。なお、特定技能は最長5年と働ける期限が設けられており、母国から家族を連れてくることは禁止されています。介護技能評価試験または日本語能力判定テスト、介護日本語評価試験を受験し合格することが条件です。

研修面での課題

日本語能力を習得するのが難しい

介護サービスにおいてコミュニケーションは欠かせません。介護の対象となる人とだけではなく、チームで労働するため、現場職員ともしっかり意思疎通がとれる必要があるのです。

また、日本語を話せるだけでなく、記録をしたりカルテを読んだりなど、言語知識、読解力記述力、聴解力など、あらゆる面で日本語能力の水準を満たしていることが求められます。この外国人介護士に求められる日本語の壁は極めて高く、EPAで外国人労働者を受け入れている日本の施設でも68%の日本職員が共に働くことに障害を感じています。外国人介護者も78%以上が日本語の習得が困難だと調査で答えており、上記のことから介護現場における言語能力は大きな課題であるといえるでしょう。

介護福祉士国家試験の合格率が低い

年に1回実施される国家試験。外国人介護人材は5年以内に国家試験に合格できないと、母国に帰らなくてはならないという厳しい現実が付与されています。受験するには3年以上実務経験を積むことが必要であり、受験する機会が滞在期間中に1回と、かろうじて再受験のために一年の猶予が与えられているのが現状です。 国家試験は13 科目から構成され、問題数は 120 問、解答形式は5択の選択式。60%以上の得点が合格で、合格率は全国平均で55%~70%ほどとされています。

なお、 国家試験の内容には介護現場で実際に役立つものとそうでないものがあり、介護現場で業務が問題なくこなせる=国家試験に問題なく合格できるというわけではありません。そのため、合格を目指す外国人介護人材は普段使う日本語にだけでなく、国家試験で用いられている漢字や用語を勉強する必要がありました。そこで、厚生労働省は EPA候補者が少しでも多く合格できるように試験の改善を図りました。日本語のハンディキャップをなくすために英語を併記したり、試験時間を一般受験者よりも 1.5 倍延長したりしたのです。

しかし、それでも依然全受験者の合格率と比較すると外国人介護人材の合格率は低いです。長く日本で優秀な介護士として働き続けてもらうためにも、受験の際に外国人介護人材が背負うハンディキャップをいかになくすかが課題となるでしょう。

解決すべく派遣国側で研修・教育を行なう企業が出現

現地教育を無償で提供

外国人介護人材の問題点を解決すべく、オリジナルのカリキュラムやテキストを作り、現地の若者を対象に日本語介護教育を無償で実施する企業が登場しました。対象となるのは東南アジア4ヶ国(フィリピン・ベトナム・ミャンマー・カンボジア)であり、教育期間は7~8ヶ月ほどです。現地で無償の教育を提供するだけでなく、人材の候補者を選定し、施設とマッチングしたり面接をしたりするところまで行います。また、特定技能ビザの申請をサポートや、日本への送り出しまで請け負う徹底ぶり。来日した後は生活支援や日本語の教育支援も行います。海外で現地教育をした、優秀な海外介護人財を全国へ紹介してくれる、介護人材不足解消の架け橋となる企業でしょう。

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