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外国人介護士を雇用する介護事業所が近年増加しています。そこでこの記事では、カンボジアの人材を受け入れる際の制度や資格、条件をはじめ、カンボジアの人と一緒に働く際に知っておきたい国民性や注意点についてまとめました。
日本国内の人材不足を目的として設立された在留資格です。最長5年間就労することが可能。入国時の要件は、日常生活に支障がない程度、また介護現場で働く上で必要な日本語能力を持っていること、とされています。また、介護現場で適切に働くため必要な技術の水準を満たしていることも必要です。これらは入国前の試験により確認されます。
専門的・技術的な分野へ外国人労働者を受け入れることを目的とした在留資格。希望により制限なく在留期間の更新が可能です。日本にある介護福祉士養成校に留学して介護福祉士資格を取得すると、在留資格「介護」を取得できます。
日本の技術を相手国へ移転することを目的とした制度です。入国時には日本能力試験N4程度が要件ですが、N3程度の能力を持つことが望ましいとされています。また、入国1年後には、N3程度の日本語能力を持っていることが要件です。また介護経験については、外国で同等業務への従事経験があることなどが定められています。
雇用制度によって、外国人介護士の就労目的や能力は異なります。事前に雇用制度の違いを理解した上で、外国人介護士を採用しましょう。
「カンボジア」は通称であり、正式名称は「カンボジア王国」。ベトナム・ラオス・タイと国境を接しており、面積は約18万平方キロで日本の約半分です。首都は近年急速に発展しているプノンペン。日系のお店も多く出店しており、2014年にはカンボジア初のイオンモールもオープンしています。
人口は1601万人(2017年)ですが、人口の約9割がクメール人(カンボジア人)です。そのほか、チャム族やベトナム人、華僑などの民族から構成されている国です。
カンボジアの言語はクメール語ですが、かつてフランスの植民地であったことからフランス語を理解する人も多くいます。さらに、ビジネスシーンでは多くの場面で英語を使うことも可能です。さらに、タイ語やベトナム語など、近隣の国の言葉を話す人も多いといわれています。
カンボジアは平均年齢が25.6歳(2016年)と非常に若者の割合が多い国です。これは、1970年台におきたクメール人の虐殺によって40代以上の世代の人口が少ないことが影響しています。
敬虔な仏教徒が多いことから温和な人が多いといわれるカンボジア。どのような国民性があるのでしょうか。
カンボジアの国民性としては、一般的に「シャイで温和」といわれることが多いです。さらに、家族や仲間と過ごす時間を重視していることから協調性も高いといえるでしょう。
カンボジアには親日家が多いといわれています。そのため、現地を訪れた場合には言葉は通じなくても優しく声をかけてくれる人が多いようです。
見栄・プライド意識が強く、身なりや学歴、所得などによって相手の身分を判断してしまう傾向も。そのため、自分に足りない部分がある場合にはコンプレックスとして抱えてしまうこともあります。
カンボジアでは、上座部仏教(旧名では小乗仏教)が国教と定められています。人口の90%以上が上座部仏教徒。カンボジア全土には3,700を超える寺院があり、63,000人ほどの僧侶がいるといわれています。さらに、週に1度の仏日は、多くの人が寺院に集うことからも、敬虔な仏教徒が非常に多いということがわかるでしょう。
また、人口の大多数が仏教を信仰しているものの、カンボジアでは自由に宗教を選ぶことも認められています。そのため、仏教徒のほかにイスラム教やキリスト教、独自の宗教を信仰する人も。上座部仏教を信仰しているのは主にクメール人、イスラム教を信仰しているのは主にチャム族である、といわれています。
カンボジアには現地通貨として「リエル」という通貨が流通していますが、実際はカンボジアの大半の店でリエルでなく「ドル(USドル)」での支払いが主流という点も特徴です。そのため、日本円と現地通貨を比較する場合、リエルで考えるよりも円とUSドルの比較で考える方が、日本人にとっては分かりやすいかも知れません。
なお、2021年1月20日時点で「1リエル:0.026円」となっており、「1USドル:103.56円」となっています。
2020年1月1日から適用されたカンボジア国内の最低賃金は「月額190ドル」となっており、日本円に換算するとおよそ「月収19,676円」が最低賃金となります。
カンボジアの最低賃金は、1997年に創設されて以来、年々少しずつ増加しているものの、日本と比べると大きく低いことが実際です。
一方、国税庁の民間給与実態統計調査結果によれば、日本人の平成30年の平均収入は年収441万で月収に換算すれば367,500円となり、日本とカンボジアでは大きな差があると分かります。加えて厚生労働省の調査結果によれば、介護士の平均年収は月収15万~26.8万円となっており、カンボジアの最低賃金を考えれば、日本で介護士として働ければおよそ10倍の賃金を得られる計算になります。
また、現在は外国人労働者であっても、日本で介護士として働く場合、適正な給与体系を考えられる制度になっており、カンボジアから日本へ出稼ぎに来たいと考える人がいることは不思議でないでしょう。
※参考サイト:独立行政法人労働政策研究・研修機構「2020年の最低賃金引上げ額の決定(カンボジア)」(https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2019/12/cambodia_01.html)
※参考サイト:国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm)
※参考サイト:厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2015/)
カンボジアでは様々な業種において不安定職業が認知されており、賃金規定がなかったり労災事故が多発していたりといったケースも珍しくありません。そのため、他国との政府間協定などにより、海外へ出稼ぎ労働者として働きに出ているカンボジア人も大勢います。
そのような社会的背景を持つカンボジアではそもそも、他の国へ移ってより良い労働環境で働くということに対して、比較的前向きな国であるといえそうです。
カンボジアはかつて世界的な貧困国として認知され、実際に経済的に困窮しているカンボジア人も少なくありませんでした。
ところが、カンボジアでは急激な経済成長によって貧困率が改善し、世界銀行は2015年にカンボジアを「低所得国」から「低中所得国」へと格上げしています。
しかし、経済指標として見れば貧困が改善しつつあるとされるカンボジアも、全体的に見れば地域格差が拡大しており、特に農村部では多次元的な貧困で苦しんでいる人もいるのが実状です。
カンボジアにとって中国やEUとの貿易は経済基盤の主軸ですが、国内の政治問題や人権問題と相まって、カンボジアと諸外国との関係は複雑化しています。一方、カンボジアは過去の内戦や虐殺によって高齢者が死亡しており、意欲的な若年層も多くなっています。
そのような状況下において、平和な日本で人権を認められながら専門技能を修得しつつ適正な賃金を得られる外国人介護士をカンボジア人が目指そうと考えることは、あまり不思議でないといえるでしょう。
カンボジア人介護士を雇用する際に、気をつけておきたいことをご紹介します。
カンボジアの人はプライドが高いため、ほかの人がいる前で注意されたり、叱られることを嫌がる傾向があります。そのため、仕事の上で注意しなければいけない場合は、人がいないところで、が基本です。
カンボジア人は、仕事に真面目に取り組む人が多いといわれています。素直に指示内容に従いますが、その反面自己主張が弱くなることが多いようです。立場を重視し上司を立てることから、疑問点に気づいても、上司のいうことには従う、という考えからやり過ごすことも。時折声をかけて、気づいたことはないか声をかけると良いでしょう。
職場にはある程度のルールはもちろん必要ですが、がんじがらめにしてしまわないことが大切。ピリピリとした空気を作らず、のびのびと働ける環境を整え、カンボジア人介護士との関係性を育んでいきましょう。
カンボジアでは日本の病院や教育機関が協力して介護人材の育成に取り組んでおり、介護人材の育成状況は現在進行形で向上しています。そこで、まずはカンボジアの介護人材育成状況について把握しておきましょう。
カンボジアでは祖父母や親子、子供らが同居する3世代家族や4世代家族も多く、日常的に高齢者や年長者と接する機会に恵まれています。加えて、カンボジアではかつての虐殺によって高齢者や年配の人間が減少しており、若者が多い国だからこそ、現在も生きている目上の人を大切に敬う文化が重視されていることも特徴です。
普段から高齢者や年長者の手助けをしたり、サポートをしたりする習慣が根付いているカンボジア人は、介護人材として働くために必要なメンタル面が育成されやすい環境にあり、国民性として介護業界へ適性を持っているといえるでしょう。
カンボジアでは、大量虐殺という過去によって多くに犠牲が生まれ、教育環境においても深刻なダメージを受けました。そのため、カンボジア政府は若者の教育意識の向上やスキルアップを重視しており、日本の高い技術をカンボジア人へ伝えるための取り組みも両政府の連携によって進められています。
また、2018年9月には日本企業がカンボジア政府より認可を受け、「カンボジア日本技術大学」という介護技術やIT技術を学べるASEAN初の教育機関(2年生短期大学)を設立しました。
カンボジア日本技術大学では、日本の介護技術だけでなく、介護哲学や人と人のコミュニケーションについても学ぶことが重視されており、卒業生は日本だけでなく、アジア諸国やグローバルスタンダードな環境で活躍できるプロフェッショナルを目指しています。
カンボジアでは大学進学率が就学期にある人のおよそ1%程度とされており、高度教育を受けるチャンスが限られています。
そのような中で、高度な専門教育を受けられ、卒業後は日本で働くといった未来へつなげられる教育機関に対しては、意欲的なカンボジア人からの注目が集まっており、真面目で勤勉なカンボジア人ほど優秀な人材に成長できる環境がそろいつつあることも重要です。
カンボジア日本技術大学などで意欲的に学んだカンボジア人の中から、カンボジア初となる介護特定技能評価試験合格者も誕生しており、2020年10月には日本へ訪れて外国人介護士としての1歩を踏み出しました。
今後は一層に学生や人材のスキルアップが目指されており、日本の介護人材不足をカバーできる人材の育成が期待されています。
カンボジアでは医療系NGOや介護専門大学だけでなく、王立プノンペン大学のような国立教育機関においても、日本人介護士や看護師を講師として招いた介護講座の新設が進められています。
また、成績優秀者は日本での研修旅行へ参加できたり、介護分野の在留資格「特定技能」の資格取得も目指せたりと、様々なチャンスが与えられているため、意欲的なカンボジア人が自分や国の将来を見据えて学んでいることもポイントです。
内戦から立ち上がり、前を向いているカンボジアですが、だからこそ格差も広がっており、医療面や公衆衛生といった即座に経済的利益を得にくい分野について後回しになっているという実情もあります。
しかし、介護技術や看護意識は一朝一夕に成熟するものでなく、カンボジアでは将来を見据えた人材育成が政府主導で行われていることも見逃せません。
また、技術を習得すれば来日して働けるという目標も、介護分野へ挑戦する若者にとってモチベーションとなっています。
カンボジアの国の人に限らず、外国人介護士を雇いたいと考えた場合は、まず雇用制度について知ることが必要です。例えば、人材不足を解消したいので雇用を考えている場合は、「特定技能ビザ」といったように、その制度や在留資格にはそれぞれ目的があります。
その目的や制度の概要、条件などをしっかりと確認した上で、外国人介護士の雇用を検討してみましょう。