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コラム6:外国人介護士の再入国に関する課題

このページでは、一時帰国した外国人介護士の再入国に関する課題やリスク、また外国人労働者を取り巻く日本社会の問題などについて、総合的に解説しています。

外国人労働者(外国人介護士)には「再入国」のリスクがある

日本で介護職員や実習生として働く在留外国人にとって、様々な事情で一時的に日本を出国した後、再び日本へ戻ってきて元のように働けるかどうかは切実な問題です。また、外国人介護士を受け入れている施設側にとっても、一時的に休職している外国人介護士が、再び職員として働けるかどうかは非常に重要なポイントです。

永住権を取得した外国人にも再入国がある?

基本的に、在留資格をきちんと認められている外国人の場合、適切な手続きを行っておけば、一時帰国などで日本を出たとしても再び入国することは難しくありません(再入国許可)。

しかし、時には想定外の事態が起きて、外国人の再入国が認められにくくなるケースもあります。外国人労働者などだけでなく、いっそ永住権を取得している外国人や、日本人と結婚して日本で暮らしている外国人であっても、再入国までに面倒な審査や長い時間が必要になるケースもあり得るのです。

想定外の事態が起こった場合の再入国が困難

外国人の再入国が制限される事態としては、日本と他国との間で起こる政治的問題や外交トラブル、さらにテロに対する警戒などです。その他にも、例えば世界的な感染症の拡大など、日本だけでは解決しようのない問題もあり得ます。

もちろん、これらはそうそう簡単に起こる問題ではないでしょうが、可能性がゼロでない限り、外国人にとって一時的にでも日本を離れることにはリスクが伴うと考えておくことが必要です。

再入国許可とは?

再入国許可とは、出入国管理及び難民認定法第26条にもとづく制度。一時帰国などで外国人が日本を出国する際、事前に申請しておくことで在留許可の失効を防ぎ、再入国時の手続きを簡略化するための特別措置です。

再入国許可の申請と注意点

「再入国許可」と「みなし再入国許可」

再入国許可を得るためには、原則として外国人が日本を出国する前に申請を行っておかなければなりません。申請には「再入国許可申請書」へ必要事項を記入した上で、在留カードやパスポートなどの必要書類とともに、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署へ提出します。

また、再入国許可申請はあくまでも現時点で適切な在留資格を持っていることが条件であり、不法滞在者などが申請することはできません。

なお、出国から1年以内に再入国し、日本での活動を再開・継続する見込みがある外国人に対しては、出国時に「みなし再入国許可による出国」を希望することで、事前申請を行わずとも再入国許可が認められることもあります。

永住者や特別永住者でも申請が必要

再入国許可申請や、「みなし再入国許可による出国」の希望申告が行われなかった場合、たとえ永住者や特別永住者であっても出国と同時に在留資格が失効され、再入国時には再び在留資格を取得することが必要です。

既存の在留許可の期限を越えた申請は不可

再入国許可が適用される期間は、みなし再入国許可で最長1年(特別永住者は最長2年)、事前申請による場合でも最長「5年を超えない範囲」となります。ただし、既存の在留資格の有効期限が5年以内に満了する場合、在留許可の期限を越えて申請することはできません

外国人介護士が再入国できない場合の問題

介護職員の急な不足

一時帰国した外国人介護士が再入国できない時や、再入国までに長い時間が必要になる時、その外国人を雇用している施設にとっては思わぬ人材不足に対処する必要が生じます。

そもそも介護の現場ではすでに深刻な労働人口の減少が問題になっており、たとえ短期間であったとしても、想定外の人材不足によって介護の質が低下してしまうリスクは無視できない問題です。

再雇用までにかかる期間が不透明

再入国に際して問題が生じた場合、いつ頃に再入国が可能になるのか全く先行きが分からないといったケースも考えられます。

予定が不明なままでは、施設にとっても運営計画を立てることが難しくなり、さらに問題が複雑化していくことでしょう。

外国人介護士に対する偏見の増大

再入国が認められないような場合は、日本を取り巻く世界情勢に何らかのトラブルが生じているか、あるいは外国人それぞれに何らかの問題が認められる場合が考えられます。

また、そのようなイレギュラーな事態が起きた時、日本人の中に外国人に対して偏見を増大させる人が現れたり、差別感情が社会へ広まったりしてしまうリスクもあり、施設側は日本人と外国人の橋渡しとして、健全な環境を維持しておかなければなりません。

日本社会と外国人との間にある課題

出入国在留管理庁と外国人とのトラブル

再入国を含め、外国人の出入国については出入国在留管理庁(旧・出入国管理局)が管理業務を担当します。また、不法滞在者や何らかの理由で在留資格を取り消された外国人は、出入国在留管理庁によって拘束。入管収容施設内で隔離生活を強いられてしまうのです。

しかし、入管職員や施設内環境が収容者の人権を侵害していると懸念される問題も起きており、日本社会と外国人との間で軋轢を生む原因の1つとなっています。

正当な在留資格を持った外国人への敬意と相互理解

不法入国者や不法滞在者でなく、正当な在留資格を取得して日本で働いている外国人は、日本社会にとって重要な人材であり、彼らとの信頼関係を構築することが、結果的に日本社会や日本人にとっても利益をもたらします。

実際、外国人と日本社会との間で生じる問題の中には、相互理解の不足や偏見によって引き起こされているものも多く、適正な許可申請や資格取得といった書類上の話はもちろん、人と人として互いに敬意を払いながら相互理解に努めていくことが重要です。

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