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フィリピン

介護に関わる人材の不足などを理由に、フィリピン人が日本の介護施設などで就業するケースが多くなってきています。この記事では、フィリピンの介護士を雇い入れる際に利用できる制度や仕事上での注意点などについてまとめました。

フィリピンの人財を受け入れることができる制度/条件の紹介

フィリピン
フィピンの人材を介護現場に受け入れるための制度は「特定技能ビザ」「EPA」「介護ビザ」「技能実習」の4種類があります。

人材不足解消のため、一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れるための制度。入国前には「日常生活に支障がない程度の日本語能力」「介護現場で働く上で必要な日本語能力」「受け入れ業種において適切に働くために必要な技術」があるか試験で確認します。

日本語能力は、現地で6ヶ月の研修を行ったのち、日本語能力検定N5以上で入国が可能。また、入国後には6ヶ月の研修を受けて介護事業所で就業します。また、介護経験については、フィリピンの看護学校(学士・4年)を卒業、または4年制大学卒業+フィリピン政府による介護士認定を受けていることが要件です。

介護の現場で働く外国人に在留資格を与えるために設立されたもの。日本の介護福祉士養成学校に留学し、介護福祉士資格を取得したのちに在留資格「介護」の取得が条件となります。

母国の発展に寄与するため、日本で技術や知識を学ぶための制度です。入国時には日本語能力試験N3程度が望ましいとされ(要件はN4程度)、入国1年後にはN3程度の日本語能力を持つことが要件。介護経験については、外国において同等業務への従事経験があることなどの要件が設けられています。

このように、外国人介護士を雇うにはあらゆる制度があります。各制度の違いについて正しく理解した上で、外国人介護士を迎えましょう。

フィリピンの特徴

フィリピンの首都はマニラであり、2015年時点で人口は約1億98万人です。フィリピン国家統計局によって発表されている平均年齢は男性が65.0歳、女性が71.9歳となっています。

民族について

フィリピンは7,000を超える島々から構成されている国。多民族国家としても有名で、その民族数は100とも200ともいわれています。中でも最も人口が多いのはタガログ族で、2,000〜2500万人と推定されます。次いでセブアノ族の1,300万人、イロカノ族の800万人と続きます。

公用語はフィリピン語と英語

フィリピンでは非常に多くの言語がありますが、公用語はフィリピン語と英語です。フィリピン語は、マニラ周辺で使われていたタガログ語が元になっているものです。また、英語を話す人口としては世界で3番目に多いとされていますが、これは1990年代前半からアメリカによって統治が行われてきたため、英語が浸透したという歴史があります。

フィリピンの国民性

フィリピンの国民性は、4つの「F」から始まる単語で表されます。「Faith(信教)」「Family(家族)」「Face(メンツ)」「Festa(お祭り)」の4つです。

Faith:宗教が日常生活に根付いている

国民の大部分がカトリック信者。キリスト教などに関連するイベントなどを大切にしているなど、生活に信仰の様子が見られます。

外国人介護士と宗教について解説

Family:家族を大切にする

家族を大切にする点もフィリピン人の大きな特徴といわれています。また、年長者を敬う文化も根付いており、歳をとった両親は子どもが面倒を見るのが当たり前、とされています。

Face:メンツを大切にする

フィリピン人は、メンツを保つことを非常に重要視しています。「恥」を避けるためにはどんなことでもしますし、逆に他人のメンツも保とうとします。

Festa:お祭り好き

フィリピン人は「お祭り好き」と良くいわれます。街中には音楽が流れており、様々なお祭りが開催されています。特に年に1回の「シヌログ祭り」にはフィリピン全土から人が集まるほど大きなお祭りです。

フィリピンの宗教や文化

ASEANで唯一のキリスト教国であり、国民のおよそ80%がカトリック。またそのほかのキリスト教が10%程度です。また、イスラム教は国民の約5%です。ただし、ミンダナオではイスラム教とが人口の20%以上となっています。

前述した通り、非常に日常生活に宗教が根付いているのもフィリピンの大きな特徴で、日曜日には多くの人が礼拝に足を運びます。また、大きなショッピングモールなどでも、1日2回から3回決まった時間にお祈りのためのアナウンスがあります。このように、非常に信仰に熱心な国といえるでしょう。

また、フィリピンの祝祭日には、クリスマスやイースター、ハロウィンなど、キリスト教に由来しているものがたくさんあります。

フィリピンの経済状況

日本円と現地通貨の価値比較

フィリピンでは現地通貨として「フィリピン・ペソ(ペソ)」が主に流通しており、日本円に換算すれば1ペソはおよそ2.0~2.5円程度とされています。なお、フィリピンでは補助通貨「センタボ」もありますが、現在はほとんど使用されていません。

また、日本とフィリピンの物価を比較すると、フィリピンの物価は日本のおよそ3分の1~5分の1程度と考えられており、日本円の価値が高くなっていることもポイントです。

フィリピンの最低賃金と経済格差

フィリピンは日本よりも物価の安い国であり、必然的に最低賃金や平均賃金も日本よりも低くなっています。一方、フィリピン人の平均純資産は2000年からおよそ20年間で4倍近くにまで増大しており、経済成長を続けている国だとも考えられます。

この結果、フィリピンでは日本人も驚くような富裕層と、日本人では想像もできないような貧困層が社会で混在しており、この極端な経済格差は社会問題として改善に取り組まれていることも重要です。

フィリピンでは2018年11月の時点で、日額最低賃金が非農業分野で500~537ペソ、農業分野で500ペソとなっており、日本円に換算するとおよそ日額1000~1300円程度となります。

さて、日本との物価差が3分の1~5分の1とされている状況において、最低賃金(日給)が日本における時給と変わらないような状態は、現地で暮らす一般的なフィリピン人にとって厳しい経済状況を示唆していると考えることが可能です。加えて、フィリピンではさらに地域ごとの最低賃金格差もあり、都市部でなく地方へ行けば最低日額賃金が300ペソ(約600円)台ということも珍しくありません。

そのため、富裕層でないフィリピン人にとっては、自国で就職して働くよりも、日本など物価の高い国へ出稼ぎ労働者として移住することが魅力的に映ることもあるでしょう。

※参考サイト:JETRO「マニラ首都圏の最低賃金、2020年初頭にも引き上げか(フィリピン)」(https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/12/314da5cd4c597b99.html

海外企業からの投資を歓迎する開発計画

フィリピンは2020年に世界的な感染症拡大によって国際市場が混乱するまで、21年連続で経済成長を続けてきました。また、国民の平均年齢が20代前半と、全体的に若年層が多いフィリピンでは、今後さらに人口増加が続くと予想されており、それに伴って経済成長も期待されています。

加えて、2016年から政権を支配しているドゥテルテ大統領は、外貨規制の緩和や外貨誘致にも意欲的に取り組んでおり、海外企業からの投資を歓迎するという政策を採っています。そのため、オフショア開発など外国企業からの進出も多くなっており、IT分野などを始めとして新しい技術や知識を習得することに意欲的な若者が増えていることは特徴です。

※参考サイト:日本経済新聞「協調こそ成長の基盤 アジアの未来 フィリピン大統領 ロドリゴ・ドゥテルテ氏 南シナ海、中国の主張疑問」(https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45613280T00C19A6FF3000

国民の10人に1人が海外労働者

一方、フィリピンの高いGDPを支えている基盤として、1,000万人を超える海外労働者(OFW)からフィリピン国内への仕送りを忘れることもできません。

フィリピンは世界最大の労働力輸出国とも呼ばれており、国民の10人に1人が労働力として海外へ移住しているという現実があります。つまり、フィリピンではそもそも労働力として人材が海外へ進出しやすい風土が醸成されており、日本で外国人介護士として働きたいと考える人がいても不思議ではないでしょう。

※参考サイト:JETRO「世界最大の労働力輸出国フィリピンの現状と課題(前編)世界中に多くの海外就労者を送り出す」(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2019/0303/390d9735f469d1f6.html

介護現場で気を付けたいこと

フィリピン人介護士を雇い入れる前に、一緒に働く上で注意したいことを覚えておきましょう。

人前で怒らないこと

フィリピン人はメンツを大切にする傾向があります。そのため、人前で注意したり指導をしないことが大切です。ミスなどを指摘したい場合は、1対1が基本。

仕事を振るときは一つ一つ

フィリピン人は一つのことに集中して取り組むことが得意といわれています。そのため、一度にたくさんの仕事を振らないこともポイントです。さらに、最初に決めた業務以外はやらないことが常識と考えています。そのため、用意したマニュアルに沿った指示を心がけるとスムーズに仕事が進むでしょう。

仕事を行う上でも家族を大切にする

家族を大切にするのもフィリピン人の特徴ですが、それは仕事に関しても同様。フィリピン人は家族の集まりなどを優先して仕事を休む場合もあるといいます。

フィリピンでの介護人材育成状況

フィリピン人は国民性として外国での出稼ぎ労働者に適しているといわれており、さらに日本で外国人介護士として働ける人材の育成についても、日本とフィリピンの両政府が連携して取り組んでいます。

そのため、日本で活躍する外国人介護士を雇用したいと考える施設運営者にとって、フィリピンの人材育成状況を把握しておくことは重要なポイントといえるでしょう。

海外労働に適している国民性とコミュニケーション能力

フィリピン人は敬虔なキリスト教徒が多く、そもそもボランティア精神や社会福祉の意識が幼い頃から根付いているだけでなく、お祭り好きの気質もあって明るい国民性となっています。そのため、地元を離れて新しい環境に入っても積極的に他者とコミュニケーションを取り、仲良くなっていけることは、介護業界で活躍する人材として魅力的な要素といえるでしょう。

加えて、フィリピンでは家族を大切にする人が多く、普段から高齢者や年長者と接して、彼ら彼女らの世話をしていることも重要です。

他人のメンツや気持ちを尊重しながら、高齢者や要介護者へ接していけるフィリピン人介護士の特性は、介護人材の育成を考える上で大切な土台となっています。

千を超える介護士育成の教育機関

フィリピン国内には、介護士としての技術や知識を学べる教育機関が数多くあり、その中には日本語教育と介護分野の教育を同時に行っているものもあります。

一方、フィリピン国内では介護士や看護師を志望する若者が増えていることから、国内需要だけでは飽和状態になりつつあるということもポイントです。

そもそも海外労働者として出稼ぎへ行く上で抵抗感が低く、さらに日本を含めた海外で活躍することを前提とした介護人材育成機関が豊富にあるという点は、国外での活躍を目指すフィリピン人にとっても、魅力的な介護人材を確保したい日本人や介護施設にとっても、Win-Winの状態であるといえるでしょう。

フィリピン人介護士は世界中から注目されている

フィリピン語だけでなく英語も公用語として活用しているフィリピン人は、英語圏やそのほかのエリアからの労働力として注目されており、優れたフィリピン人介護士は中国やアジア諸国の富裕層からも需要の高い人材となっています。特に、高齢化は世界的に解決すべき課題となっており、介護・看護インフラの拡充は世界中の国々にとって重要なテーマです。

そのため、安易な労働力としてフィリピン人介護士を考えていると、能力的に優れた人材ほど来日するメリットを感じず、他の国へ向かってしまうかも知れません。

メンツとプライドを大切にするフィリピン人を活用する場合、人材ごとの能力や経験に見合った待遇を提供することも大切です。

日本語能力に優れたフィリピン人介護士も少なくない

厚生労働省が発表している、日・フィリピン経済連携協定にもとづいたフィリピン人看護師・介護福祉候補者の受け入れ実績を見ると、募集が開始されて最初の実績となる平成21年度から、2年目の平成22年度で実績が減少したものの、その後は右肩上がりで介護福祉候補者の受け入れ人数が増加していると分かります。

また、毎年の介護福祉候補者の中には、日本語能力試験N2以上の能力を有して日本語研修を免除されている人材もおり、フィリピン人介護士の日本語教育環境が国内で適性に成熟していることが伝わってきます。

※参考資料:厚生労働省「フィリピン人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000025247.html

客観的に評価されているフィリピン人介護労働者の魅力

公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)の発表(平成30年度版)によれば、日本で働いている外国人介護士のうち、その人数比率はフィリピン人が約41%と圧倒的になっていることもポイントです。

日本とフィリピンの間にはすでに、フィリピン人介護士に関する実績や信頼関係が一定以上に構築されており、これがさらに優れたフィリピン人介護労働者を日本へ招くという好循環を生んでいます。

※参考資料:公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)「平成30年度版EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士受入れパンプレット」(https://jicwels.or.jp/files/EPA_H30_pamph-r.pdf

外国人介護士を雇うと決めたら雇用制度を知ろう

この記事では、フィリピン人を介護事業所で雇う場合の制度や資格、そしてフィリピン人の特徴などについて解説しました。

外国人介護士を雇う場合には、どのような制度を利用すべきなのか、該当する雇用制度について知ることが大切です。どの国から人材から雇うかによって利用できる制度も異なりますので、内容に関してしっかりと理解しておきましょう。

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