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ここでは、外国人介護士としてモンゴルの方を日本へ招く上で注意すべき、モンゴルに住む人たちの国民性や特徴、モンゴルの宗教・文化について詳しくまとめています。
まず、モンゴル人を日本の介護業界へ受け入れる場合に利用できる、「特定技能ビザ」・「技能実習生」・「在留資格(介護)」の3種類の制度について違いを理解しましょう。
日本国内における介護業界の人材不足を解消するため、日本語能力や介護スキルに関して一定水準以上の実力を認められたモンゴル人に対して、特定技能ビザの発行が認められています。
モンゴルからの特定技能外国人の連絡窓口の担当として、日本国内では「出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課」、モンゴル国内では省の「労働・社会保障サービス総合事務所(GOLWS)」が設けられています。またモンゴルから特定技能外国人を受け入れたい場合、まずGOLWSと相互に契約を締結した上で、GOLWSの人材データベース「特定技能モンゴル人候補者表」へアクセス権を有する必要があります。
モンゴルにおける特定技能外国人の送り出しができる機関はGOLWSのみとなっているため、採用を検討する際はGOLWSの出している情報をまず確認すると良いでしょう。
※参照元
【PDF】法務省「日本国法務省、外務省、厚生労働省及び警察庁とモンゴル国労働・社会保障省との間の在留資格「特定技能」を有する外国人に係る制度の適正な運用のための基本的枠組みに関する協力覚書(仮訳)」(http://www.moj.go.jp/isa/content/930004253.pdf)
【PDF】厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」(https://www.mhlw.go.jp/topics/2020/01/dl/9_shakaiengo-04.pdf)
【PDF】法務省「モ ン ゴ ル 特 定 技 能 外 国 人 に 係 る 手 続 の 流 れ に つ い て」(http://www.moj.go.jp/content/001321050.pdf)
日本の介護業界における介護技術や知識の習得を目的として、モンゴルから外国人技能実習生が来日しています。技能実習生と呼ばれる方々は、入国前に日本語能力試験で一定以上の水準をクリアし、介護業務等に関する事前の経験を有している必要があります。
日本の介護福祉士国家試験に合格して介護士資格を取得しているモンゴル人は、一定要件を満たせば外国人介護士として日本での就労ビザを取得できます。
ユーラシア大陸の東部に位置するモンゴルは、国土として日本のおよそ4倍の面積を保有している一方、人口は約330万人(2019年・モンゴル国家統計局)となっており、人口密度の低さが特徴的です。かつては社会主義国でしたが、1990年の複数政党制導入により、社会主義が事実上放棄され、1992年にはモンゴル国憲法が施行されて現在の「モンゴル国」となりました。
参照元:外務省|モンゴル基礎データ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/mongolia/data.html)
国土の南北を中国やロシアに挟まれる形で存在するモンゴルでは、外交方針として「中国とロシアの両隣国とのバランス関係」が重視されています。そのためアジアの先進国として認められている日本との連携にも積極的で、日本政府とモンゴル政府による協力体制だけでなく、民間でも様々な文化交流が行われています。
特に日本の国技である相撲においてはモンゴル出身の横綱も誕生しているように、日本文化にも深い関わりを持っている様子がうかがえるでしょう。
広大な国土を誇るモンゴルの人々に関して抱くイメージと言えば、かつて遊牧民として牧畜を行いながら、国内を転々とする生き方をしている、というものでしょう。
しかし、社会主義体制から大統領制へ移行したことで、農村や都市部へ定住するモンゴル人も多くなり、鉱工業を基盤とした経済成長に合わせて地方都市や首都ウランバートルへ移り住んできた人も少なくありません。
2000年代以降は鉱物資源の不足などの問題が拡大し、国内の貧富の差が広がっていることも事実です。現在、モンゴル人口の大半はウランバートルへ集中しており、むしろ遊牧民としてのモンゴル人の方が少なくなっているのが現状です。
モンゴルの国民は基本的にモンゴル系が大多数となっていますが、モンゴル系の中にはさらに細かい民族・部族が存在しており、最大規模のハルハ族の他にも複数の少数民族が存在しています。
総人口に対して数%の割合ではありますが、モンゴル系の他にもテュルク系と呼ばれるカザフ民族などが暮らしており、住民の過半数を少数民族が占めているというエリアも一部あります。
モンゴル国憲法はモンゴル語を公用語として定めており、公文書などの文書は基本的に全てモンゴル語によって作成されます。実際には民族や部族ごとに異なる言語が日常会話として使われているため、国内で複数言語が利用されているのが実情。
また日本との関係性が発展するに従い、モンゴル国立大学などに日本語学科も開設され、外国語として日本語を学ぶモンゴル人の若者が増えています。外国人介護士をモンゴルから招く上で魅力的な要素でしょう。
外国人が日本語を学ぶ上で特に難しい点として挙げられるのが、漢字やひらがな・カタカナといった「文字の種類が複数あること」ですが、日本語コミュニケーションでは発音も重要なポイントとなります。
日本語の中には、モンゴル人にとって発音が難しいとされる音が少ないとされており、モンゴル人の日本語学習者は上達すればとても自然に日本語を使えるようになります。
また国立大学の他にも、2014年以降は日本語を教える教育機関が設立されており、介護分野で必要不可欠なコミュニケーション能力に期待できることは、モンゴル人介護士を活用したい事業者にとって注目すべき点です。
社会主義時代はモンゴル国内の宗教も衰退していましたが、1990年代前半に民主化が実現してからはチベット仏教が復活し、さらにモンゴル国憲法では信仰や宗教の自由も認められるようになりました。
またカザフ民族といった、一部民族の中にはイスラム教を信仰するムスリムも多く、それぞれの地域ごとに宗教観や文化性といったものが分かれていることも特徴です。
モンゴル国内では貧富の差が問題になっている上、社会主義時代に教育を受けた者と民主化後に教育を受けた者との間での意識差があり、所得レベルや暮らしているエリアによって教育や労働への考え方が異なっています。
モンゴル人は遊牧民としての歴史も長くあったせいか、一般的にのんびりとした性格であるとされており、マイペースな人が多い文化圏だとされています。しかし現代ではウランバートルなどの都市部で日本企業や外国企業に所属して働いている人もおり、近代国家の商習慣や時間の使い方が広まっていることも事実です。
ただし基本的には時間に対する認識が日本とは違うことが想定されるため、日本国内で働いてもらう場合は、時間意識に関しては意識のすりあわせを丁寧に行うようにしてください。
モンゴル人は時間に関して厳格な意識を持っていないため、世界的にも「時間に対する意識が細かい」とされる日本の商習慣と相容れない可能性があります。無理をせずゆったりとした生き方をする人が多い側面もあるといえるでしょう。
時間に対しての意識の違いを理解し、間違っても「モンゴル人が怠けている」といった認識をしないようにしましょう。性格ではなく国民性であるということを念頭に置き、適切なスケジュール管理や労務管理を行っていくことが必要です。
のんびりとした国民性に合わせて、モンゴル人はおっとりとした性格の人が多いとされています。しかし、一方で負けず嫌いでプライドが高く、彼らが大切にしているものを攻撃したり否定したりする相手に対しては、毅然と戦う特性があるとも言われています。
人として当然ではありますが、失敗を頭ごなしに叱ったり、人格批判を行ったりはせず、信頼関係構築を目指しましょう。
モンゴル人を特定技能外国人として招く場合はGOLWSを介さなければならないように、外国人介護士を雇用する場合は雇用制度についても最初に正しく理解することが必要です。
適切な雇用環境を整えて、健全に外国人介護士として働いてもらうためにも、それぞれの雇用制度や条件についてしっかり比較検討しておきましょう。