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多文化であるなら職場内外問わずして、人間関係で摩擦が生じる可能性は高まります。そこでこのページでは、外国人介護士との人間関係で困りやすいポイントやどのような支援をしていくべきなのか、ご紹介します。
外国人介護士をスタッフとして迎え入れたときには、指導者の側や他のスタッフとの人間関係でトラブルが生じることもあり得ます。介護施設に限ったったことではありませんが、人間関係はトラブルになりやすいだけでなく外国人スタッフであれば文化の違いを受け入れる必要性があるからです。
特に人間関係とそれぞれの国の文化によって、どのように他の人と関わるのかが異なってきます。具体的には、「個人」を重視するのか、それとも「集団」を重視するのかは個人の性格というよりも文化の違いによる影響が多くあります。
個人主義と集団主義の違いは、完全に別のものというよりも、バランスの違いと表現するのが妥当です。
例えばアメリカであれば個人主義が強い一方で、集団主義を重視している面もあります。また日本では集団主義を重視する教育を受けていますが、個人主義を重んじる文化もあるのです。
これらの文化の組み合わせや、個人の考え方によって何をして欲しいのが異なる場合があります。その人の性格だけでなく、どのような文化の中で育ったかを理解しておくのは大切です。
個人主義の文化の中では、集団よりも個人として「自分」に重きを置いて考えます。自己アイデンティティと呼ばれるもので、個人のニーズを最優先に考える方法となります。もちろんこれは自分勝手で自己中心的なものではなく、個人が輝けるために集団があるという考え方に基づいているものです。
個人主義の考え方は、組織のために個人が自立して行うことが求められています。メンバーが独立して自由に物事を行い、その結果が評価されるのです。自立主義の考え方として、組織が機能していきます。
自立を求められる考え方のために、個人と他の人の距離感が求められます。近い距離を持っている相手は限られており、一定のプライバシーが重視されるのです。集まる集団を自由に選びますが、自分の存在意義を高めるためという役割を果たしていないのです。
集団主義を重視する文化では、自分自身よりも自分が属している集団の中での自分の役割が大きな影響を与えます。集団アイデンティティと呼ばれるもので、自分が属している集団には価値があると感じ、それを評価しているのです。
個人が他のメンバーのニーズや気持ちに応えていくことは、自分自身を守り、利益をもたらすことにつながると考えます。そのためにメンバー間で協力したり調和させたりする関係が重視されます。
自由に任されることよりも、他の人と一緒に物事を行っていくことが良いと考えるのです。個人が集団に配慮して、結果として集団全体に利益をもたらすという意識になります。
集団主義を重視している文化では、同じ集団のメンバーには距離感が近くなりますが、集団以外の人に対しては距離を保ちたいと感じる人が多いです。
個人主義と集団主義の両方を見てきましたが、日本の文化がどのように組み合わさっているのかを理解すると、より他の文化を理解しやすくなります。
日本では職場の公的な場所とは異なり、プライベートについてあまり語らないことが常識となっています。プライバシーを守ることが重視されているのです。親しい人でないなら個人的なことについては質問しないように、また話題にはしないように心がけます。これは個人主義的な側面と言えるでしょう。
個人がルールを守らないことに関して、周囲の人の目は厳しくなります。いざとなった時には集団の連帯感があるので、「自己責任」とはいっても個人を重視する側面がありながら、組織のルールは曖昧になるなど、個人主義とはいっても複数の側面から物事を考える必要があるでしょう。
例えば日本人は「空気の読み方」が必要になったり、「遠慮」することを求められたりします。個人を重視しながらも、周りに合わせることを求めるのです。
その他にも集団主義的な文化の例として、職場での肩書きを重んじることがあります。個人名は組織名や役職名の後に名乗ることが多いほど、どの地位にいるのかを重視しているのです。日本語の文法やマナーとも関係がありますが、集団主義的な側面は強いと言えるでしょう。
個人主義が強い外国人介護士の特徴を見ていきましょう。
個人主義を重視する文化では、他人と競争することで自分のやる気を出します。良い評価を得るために努力を行い続け、周りとの差をつけたいと感じるのです。
仲間への気遣いや協調性を求める日本の文化や日本人の特徴からすると、快く思われない場合もあり得ます。
個人主義が強いことにより正しいことであれば、相手への配慮なく正義を貫こうとします。組織の曖昧な部分やマンネリ化を感じさせることに対しては、組織の背景や担当者の考え方に関係なく指摘してしまうのです。
日本人の組織であれば、空気を読んで発言しなかったり、指摘しなかったりする場合がありますが、個人主義が強い文化で育っている人にとっては関係ありません。周囲の理解が不十分だと、せっかくの有意義な意見も、「会議の空気を悪くした」「自己中心的」だと受けられてしまうことがあります。
集団での仲間との協調性を注視する日本人スタッフからすると、個人を重視する外国人介護士の言動は良く思われないこともあるでしょう。トラブルの原因となりやすいものの、決して「自己中心的」というわけではありません。あくまでも価値観の違いがあるからです。問題の解決には、どのような文化の背景があるのかを理解し、十分な話し合いが欠かせません。
個人主義の価値観を重視している外国人にとって、無駄に思える日本の組織のやり方の理由を説明することは大切です。強制することを避けながらも、「なぜ」そのように行っているのかを論理的に説明するなら、他のスタッフともスムーズに業務を行えるでしょう。
日本人スタッフも「なぜ」という理由に答えられないのであれば、業務の効率化のために不必要な会議や作業の変更を検討できるかもしれません。外国人スタッフの率直な指摘が、組織の業務改善に活かせる場合もあるのです。
このように日本の組織においても、多様な文化を取り入れることによって、メリットをもたらすこともあるのです。
集団主義が強い外国人介護士の特徴や効果的な支援方法をご紹介しましょう。
日本人の同僚とは自身のプライベートな話を避けたり、ある程度気を遣いながら話すことを求めるでしょう。しかし集団主義が強い外国人スタッフにとって、プライベートの話は仲の良さの表れとも感じるので、一線を越えた付き合いを求められるのです。
プライベートな付き合いを避けたいと考えている日本人スタッフにとっては、答えに困ったりどのように対応すべきか悩んでしまうかもしれません。
それで常識が異なるものの、「自分自身がプライベートなことを話したくない」などのように強制や批判を感じさせない伝え方が必要となります。日本だからこうすべきという話し方をしてしまうと、相手を批判していると感じさせてしまいます。相手を傷つけないように上手に伝えることが大切です。
同郷の仲間のためであれば、日本文化から見ると不誠実なことをした場合でも、嘘をつくというケースもあります。仲間を助けることを重視するあまり、平等や公平という考え方、また大きく分かると善と悪の境界線の考え方が異なってしまうのです。
このような問題については個人の性格ではなく、文化の特徴であることを理解し、なぜそれが起きているのかを分析することが大切です。日本人スタッフも、一人で対応しようとするのではなくグループで協力して改善方法を考える方が効果的でしょう。
外国人介護士との友情関係も、時には難しくなります。それは友人や友情の考え方が異なるからです。友人に対する考え方の違いやどのような距離感を保つのが見ていきましょう。
友人の考え方の違いとして、お金に関するものや保証人に関するものがあります。日本では全ての人が平等だと考える文化なので、友人に対する役割よりも組織に対する役割を重視します。
一方で、他の文化では組織のためにはルールを見逃したり、時にはルールを曲げることを期待するのです。同じ集団に属しているメンバーのためには、これほどまでに責任を負うことをいとわないのです。
日本では、個人の責任がはっきりしているので、友人や職場内の関係がプライベートにまで及ぶことは少ない傾向があります。
外国人介護士のスタッフの中には、私生活の問題まで職場の同僚に相談してくることもあります。職場の人間関係の境界線の範囲が原因となって、トラブルに発展することもあるのです。
日本人スタッフと外国人介護士の立場がどのようなものかを見極め、お互いの気持ちを理解し合うことが大切です。相手の文化やニーズを理解しておくなら、ある程度寄り添って距離感を縮めることもできますし、一方で不必要と判断するなら仕事以外の用事を断ることもできるでしょう。
家族や男女関係の違いも職場での人間関係に影響を及ぼします。誤解を避けるためにもどのような付き合い方をするのか、また日本文化との違いも見ていきましょう。
日本でも冠婚葬祭で休むことは、家族を重視するために必要だと考えられています。しかし外国人スタッフに対しては、家族の用事に関して重視すべきではないと考えているケースが多いです。
来日している外国人スタッフであっても、日本に住んでいる家族に付き添ったり、来日してきた家族のために休暇を希望するなど、家族の行事は必要となるケースはあります。
日本人スタッフと同じように家族の行事を重視する必要がありますが、家族の行事の頻度が日本で考えられているものとは異なる場合はあります。
その理由の1つとして、家族の範囲が外国人の場合には広いという理由があるでしょう。どこまでが家族なのかは国や文化によって異なるので、家族の行事の頻度が異なっているのです。
職場の中で日本人スタッフと外国人介護士の関係が、恋愛関係に発展することはあり得ます。文化が異なることで男女関係の捉え方が異なることを理解しておかなければいけません。
多文化の恋愛は、日本人スタッフと外国人スタッフの両方を理解し守るために十分注意しなければいけないのです。恋愛感覚の違いや結婚を意識しているのかなどのポイントを理解しておきましょう。
例えば、確認しておくべき点として相手の関心をどのように示すのか、また関心を示された場合にどのように断るのかなどがあります。さらに恋愛が発展していった場合に、段階ごとにどのように気持ちを適切に示すのかも大切です。
相手は友達以上の関係を望んでいるのに、本人は友人だと考えているなど文化の違いによる男女間のトラブルの原因は多くあります。
結婚に対する考え方も文化によって異なるため、相手がどのような価値観を持っているのか、またどのような気持ちで恋愛関係に発展させたいと思っているのかを理解しなければいけません。
これらのように文化の違いを理解し合い、日本人スタッフと外国人スタッフの気持ちを尊重することは、職場恋愛があった場合でもトラブルを回避するポイントとなります。見守るスタッフも双方の考え方の違いを理解しておくなら、円滑な人間関係をサポートできるでしょう。