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介護福祉士

外国人を介護従事者として雇用する場合、介護福祉士資格を取得した人材を探す方法があります。この記事では、介護福祉士資格を持つ外国人を雇用する制度について、概要や就労までの流れ、他制度との違いなどについてご紹介します。

介護福祉士資格を持つ外国人の受け入れにおける概要・目的

この制度は、専門的、技術的分野への外国人労働者の受け入れを目的として設立されました。日本の介護福祉士養成学校(大学や専門学校など)に通っている外国人留学生は、社会福祉士資格を取得すると「介護」という在留資格を取得することが可能になります。

在留資格「介護」は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有するものが、介護または介護の指導を行う業務に従事する活動を行うため」の資格となります。この場合、雇用する外国人介護従事者は介護福祉士の資格を持っていることから、介護事業所では採用してすぐに配置基準に含めることが可能な点も特徴のひとつといえます。

さらに、この「介護」という在留資格は、本人が希望する限り在留期間を繰り返し更新することができます。そのため、日本で永続的に働くことも可能となります。また、家族(配偶者や子ども)の帯同が認められています。対象者が通う養成学校の規則にもよりますが、養成学校に通学している間でもアルバイトとして雇用することも可能です。

外国人介護士を受け入れる制度は、在留資格「介護」だけではありません。その他の制度についても詳しく知りたい方は、以下からご確認ください。

在留資格「介護」制度の条件・人材の能力

日本にある介護福祉士養成学校で外国人留学生を受け入れる際には、一定の日本語能力を持つことが求められます。「外国人留学生受入れに関するガイドライン」においては、下記のいずれかの条件を満たすよう定められています。

ただし、実際の入学要件や受け入れ状況に関しては、養成学校ごとに異なるため、学校ごとに確認することが必要といえるでしょう。

入国から就労までのスケジュール

入国後は、介護福祉士養成学校に留学することになります。場合によっては、必要なレベルの日本語能力を取得するために日本語学校に通う場合もあります。その後介護福祉士資格を取得すると、介護事業所で雇用され、仕事を行うことができます(繰り返しになりますが、養成学校に留学している間にもアルバイトとして雇用することが可能な場合もあります)。

この制度に関しては、外国人を介護従事者として雇用する場合に調整を行うための機関が用意されていません。そのため、この制度を使用して外国人を雇用したいと考える介護事業所は、留学生が通学している介護福祉士養成校と随時連携することにより、自主的な採用活動を実施していく必要があります。

ステップとしては、まず周辺の介護福祉士養成校で留学生の受け入れを行っているか確認することになります。留学生の受け入れを行っている養成学校では、卒業生に紹介する就職先の情報を収集していることがほとんどですので、自分の事業所では外国人を採用する考えがある、ということをあらかじめ伝えておくことをおすすめします。また、留学生の実習先やアルバイト先として協力を行うと良いでしょう。

他の制度と介護福祉士の違い

介護事業者が外国人を雇用するにあたり、このページで説明している「介護福祉士」の他にも「EPA」「技能実習生制度」「特定技能ビザ」の合計4種類が用意されています。ここでは、介護福祉士資格を取得し、在留資格「介護ビザ」を取得するケースと他の3つの違いについてご説明します。

永続的に日本で働くことができる

外国人留学生が養成機関を終了して介護福祉士資格を取得し、在留資格「介護」を取得した場合、本人が希望する場合は制限なく在留期限の更新が行えます

家族の帯同が可能

在留資格「介護」を取得した場合、自国から家族を呼び寄せることが認められています。

受け入れ調整機関等がない

この制度の場合は、外国人留学生と介護事業所を結びつける受け入れ調整機関がありません。そのため、外国人介護従事者を雇用したいと考えている事業所は、自ら採用活動を行う必要があります。例えば近隣の養成施設などに対し、留学生の有無を確認したり、ハローワークに積極的に情報を出したりすることで、外国人留学生の雇用を行います。

勤務できるサービスに制限がない

他の3つの制度や資格においては、勤務できるサービスの種類に制限がありますが、介護福祉士資格を取得し、在留資格「介護」を取得した人材に関しては制限がありません。例えば、他の3つの資格や制度では「訪問サービス」は不可となっていますが、介護ビザを取得した場合は制限なく勤務可能です。

介護福祉士の外国人を雇用するメリットとデメリット

介護福祉士として外国人労働者を雇用したいと考えた場合、日本人の介護福祉士を雇用する時とは異なる、外国人ならではのメリットとデメリットについて、事前にきちんと把握した上で受け入れ体制を整えておかなければなりません。

メリット

長期的な雇用関係を維持することができる

技能実習生や特定技能ビザなどと異なり、介護福祉士として資格を取得し、介護ビザを取得している外国人であれば、本人が希望する限りいつまでも在留期間を更新して、介護福祉士として働き続けてもらうことができます。そのため、長期的な雇用を前提とした施設運営を行いやすく、ベテラン人材を確保しやすいことはメリットです。

意欲的な介護福祉士を雇用できる

在留資格「介護」で日本へ滞在している外国人労働者にとって、介護福祉士として働き続けることは、日本で暮らし続けられるかどうかのキーポイントです。そのため、日本人よりも意欲的かつ誠実に業務へ取り組む外国人介護福祉士も多く、彼らとの信頼関係を構築できれば優れた介護環境を実現しやすくなります。

ダイバーシティに対応できる

外国人介護福祉士を雇用することで、多言語・他文化に対応した介護環境を整えることが可能になります。日本でも国際化に向けた動きが進んでおり、将来的には在日外国人が介護施設の利用者になることもあるでしょう。そのような未来に対して、あらかじめダイバーシティを尊重した施設環境を構築しておけることは大きなメリットです。また、日本人職員にとっても、異文化に触れて多様性に対する敬意や意識を育てられる環境は、介護職員としてだけでなく人間として成長していく上で魅力的です。

デメリット

日本人特有の感性に慣れるまで時間がかかる

介護福祉士として資格を取得している外国人であれば、それに見合った日本語能力や介護スキルを有しています。しかし、介護の現場では様々な人と接することが必要になり、時には日本人ならではの感性に戸惑うこともあるでしょう。日本人にとって当たり前なことでも外国人にとっては理解が難しいこともあり、しっかりとサポートをしながら長期的に見守る余裕も施設側に必要です。

異文化を尊重したケア体制が別途必要

現代日本において、従業員のリテンションマネジメントやメンタルヘルスケアなどが多くの企業で重視されていますが、外国人介護福祉士を雇用する場合は、それぞれの文化や考え方に沿ったケア体制をきちんと構築しなければなりません。

施設側の態度によっては外国人から拒否される

介護職員として外国人を雇用できる他の資格に比べて、介護福祉士の国家資格取得は難易度が高くなっています。つまり、外国人介護福祉士はその高いハードルをクリアした人材であり、雇用環境や待遇などもきちんとスキルや経験に見合ったものを用意しなければなりません。

特定技能ビザから介護福祉士への移行

特定技能ビザから介護福祉士へ移行して介護ビザを取得するには、所定の条件を満たした上で、介護福祉士国家試験に合格し、さらに在留資格変更を申請して許可される必要があります。

受験資格は介護施設等で3年以上の就労経験

日本国内の介護施設等において、特定技能1号で介護職員として働く場合、その期間は最長5年間となっています。しかし、3年の就労経験を積んだ時点で、介護福祉士国家試験の受験資格を得られることがポイントです。

介護福祉士国家試験は合格難易度が高く、そう簡単に取得できる資格ではありませんが、介護福祉士の国家資格を取得すれば、5年の期間を超えてもそのまま介護ビザによって在留し続けることができます。

ただし、期間内に資格取得が叶わなかった場合、その外国人は本国へ帰国しなければならなくなるため、施設側も一丸となって外国人の国家試験合格をサポートしていく環境構築が重要です。

在留資格変更許可申請を提出する

介護福祉士国家試験に合格しただけでは、在留資格「介護ビザ」を取得したり、きちんとした外国人介護福祉士として日本で働き続けたりすることができません。

介護福祉士の資格を取得した外国人が、介護または介護の指導業務に従事するためには、特定技能ビザから介護ビザへの在留資格変更の申請を行うことが必要です。

在留資格変更許可申請には、地方出入国在留管理官署や法務省のホームページから取得できる「在留資格変更許可申請書」に必要事項を記入した上で、写真や介護福祉士登録証のコピーといった必要書類を添付して提出します。

また、必要書類には本人が用意するものだけでなく、勤務先の沿革や事業内容等が詳細に記載された案内書などや、勤務先との労働条件を明記した書類等も必要であり、施設側でも適正に準備をしておくようにしてください。

在留資格変更許可申請に必要な書類の一例

特定技能ビザから介護ビザへの変更申請には、以下のような書類(発行日から3ヶ月以内)が必要です。ただし、場合によってはさらに必要書類が追加されることもあるため、詳細は最寄りの地方出入国在留管理官署などで確認してください。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • パスポート及び在留カード
  • 介護福祉士登録証(写し)
  • 労働基準法にもとづいて労働条件を明示する文書(雇用契約書・労働条件通知書等)
  • 契約機関の概要を明らかにする文書(勤務先の案内書等)

EPAから介護福祉士への移行

EPA(EPA介護福祉士)から、在留資格「介護ビザ」へ移行する場合にも、国家試験へ合格した上で、在留資格の変更を行わなければなりません。

受験資格は実務経験3年以上

EPA介護福祉士候補者は、介護施設等で3年以上の実務経験を積めば、介護福祉士国家試験を受験することが可能です。ただし、受験申込み時に選択するコースによって、筆記試験のみで良い場合と、筆記試験合格後に実技試験を受けなければならない場合があります。

EPA介護福祉士候補者が筆記試験合格後に実技試験を免除されるには、「実務者研修(EPA介護福祉士候補者のみ)」か「介護技術講習」のいずれかを修了しなければなりません。

実務者研修(EPA介護福祉士候補者のみ)

介護福祉士国家試験の受験資格を得たEPA介護福祉士候補者は、「実務者研修」を修了することで、筆記試験後の実技試験が免除されます。なお、実務者研修は国家試験の受験申込み前に修了することも、受験申込み後に受講して修了することも可能です。実務者研修の実施施設等に関しては、都道府県庁の担当部署や、地方厚生(支)局担当課へ確認してください。

介護技術講習

厚生労働大臣に介護技術講習の実施を届け出た、介護福祉士養成施設等で実施される「介護技術講習」を修了することで、その後に引き続いて行われる実技試験が3回まで、受験申込時の免除申請によって免除されます。実務者研修と異なり、介護技術講習では実技試験が免除される期間に制限があるため注意してください。

受験申込みにはEPA用「受験の手引き」が必要

EPA介護福祉士候補者が受験申請を行うには、受け入れ施設あてに送付される「EPA用『受験の手引き』」が必要です。また、「受験の手引き」の請求にはそれぞれのEPA介護福祉士候補者の「候補者番号(JICWELS管理番号)」が必要になるため、必ず事前に確認しておきましょう。

国家試験合格後は在留資格変更の申請を行う

特定技能ビザから介護ビザへ変更する場合と同様に、EPAから介護ビザへ在留資格を変更する場合にも、在留資格変更許可申請書を地方出入国在留管理官署へ提出する必要があります。

外国人介護福祉士の課題

外国人介護福祉士は、介護施設にとって最も戦力として期待できる外国人介護職員ですが、実際に外国人介護福祉士を雇用するには様々な課題があります。

国家試験の合格難易度が高い

公益財団法人社会福祉振興・試験センターが公表している、介護福祉士国家試験の合格率は、令和元年度で69.9%、平成30年度で73.7%、平成29年度で70.8%と、平均しておよそ70%程度となっています。

しかし、これは外国人だけでなく日本人も含めた全受験者における合格率であり、必然的に外国人では受験難易度が高くなるでしょう。

筆記試験では、全ての漢字にふりがなを振られた試験用紙を用いて、通常の1.5倍の受験時間で受験することも可能ですが、問題自体は日本人が受験するものと同じであり、様々な専門用語についても理解しておくことが必要です。

帰国後に再入国する場合は改めてビザ申請が必要

介護福祉士としての資格を取得後、日本で就労せずに帰国して在留資格が失効した場合、当然ながら再入国・再就労には改めて在留資格を申請する必要があります。国家資格としての介護福祉士資格に有効期限はありませんが、ビザ取得には改めて就労施設を決定した上で申請が必要となります。

また、外国人の入国管理や入国審査については出入国在留管理庁(旧・入国管理局)の対応が問題になることもあり、たとえ永住者でも思わぬリスクがあることを認識しておかなければなりません。

人手不足を目的とした就労制度なら「特定技能ビザ」になる

在留資格「介護」は、介護という専門的・技術的分野への外国人労働者の受け入れを目的とした制度です。そのため、「介護業界の人材不足」を解消するための制度とは目的が異なる位置付けとなっています。

もし人材が不足して外国人の介護従事者を雇いたい、という場合には、「特定技能ビザ」と呼ばれる制度を利用することになります。人材確保の目的で雇用を行いたいと考えている場合には、特定技能ビザの制度を確認してみましょう。

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