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外国人介護士を受け入れるなかで、課題の一つとして取り上げられるのが「言葉」。施設で働く日本人介護士からは外国人介護士との言葉の壁について意見も挙がっていますが、人材不足による経営難を防ぐためには外国人介護士の力が必要です。現場で外国人介護士の能力を活かすには、どのような配慮が必要なのでしょうか。
実際に、外国人介護士を受け入れている施設のスタッフが感じている「言葉の課題」について体験談を集めました。
※引用元:公益社団法人日本介護福祉士会「外国人労働者の受け入れと、介護の技能と技術、日本語能力・コミュニ
ケーションの重要性」(http://www.moj.go.jp/content/000124150.pdf)※日本介護福祉士会会員からの聞き取りによる内容
現場からは厳しい意見があがっていますが、事前の準備と相手への理解さえあれば全て解決する内容です。まず、外国人から見て日本語がどれ程難しい言語なのか、日本語能力試験の難易度はどれほどなのか解説します。
2018年にアメリカの国務省が発表した「外国語習得難易度ランキング」では、日本語が最も習得が難しい言語として紹介されています。漢字・カタカナ・平仮名と3種類の文字を使い、漢字に至っては音読み・訓読みがあるなどあらゆる理由が習得の難しさに繋がっているようです。
完ぺきとは言えないまでも、日常会話に困らないレベルまで日本語を習得している外国人がいかに努力しているかがよくわかります。外国人介護士とコミュニケーションをとるときは、こちらの「当たり前」を押し付けるのではなく、相手に合わせた会話が重要です。
日本語能力試験の中でも簡単とされるN5でも、200時間以上の勉強時間が必要なうえに認定率は47%しかありません。N5よりもさらに難易度の高いN4の認定率は32%程度。生半可な知識や独学での日本語勉強はなかなか難しいのが現状です。
日本人である我々にとって試験のレベルは想像しがたいですが、日本語能力試験のうち難易度が最も高いN1は日本の高校生レベルといわれています。これまで全く日本語に触れたことのない外国人がN1レベルを合格しようと思うと、最低2000時間の日本語学習が必要とされています。
「日本で介護士として働きたい」と思ったとしても、日本語を学ぶためにスクールに通うほどの経済的な余裕がある外国人は多くありません。独学など努力をしても、日本語の習得には何年もかかってしまうでしょう。
外国人介護士と良いコミュニケーションをとるためには、日本人同士で話すとき以上に「伝え方」に気を配る必要があるでしょう。
上記の2つのポイントを意識することで、スムーズなコミュニケーションを図ることができます。
相手の日本語能力がどれほどなのかを把握しておくことは必要不可欠です。相手が理解できないことを伝えても、良いコミュニケーションは取れません。多くの場合には日本語を学ぶときに「です・ます」調を使っています。学校で学ぶのは、丁寧で無難な話し方だからです。
しかし意識していなくても、普段の会話ではくだけた表現も含め、様々な日本語を使うケースが多いもの。相手がどれほど日本語を理解しているか把握しておきましょう。
日本語を理解していることと知的能力は、必ずしもイコールではありません。自分の考えを日本語で表現できないからといって、子供扱いをしたり上から目線で話したりする態度を避けるべきです。
外国人が日本で生活をするようになると、文化の違いから言語以外にも「外の人」を意識させられるシーンが多いはず。だからこそ、外国人介護士が職場である日本の介護施設で活き活きと働けるように、心理的な障壁を払う必要があります。その第一歩として、対等な関係であることを理解したうえで、相手に伝わるように接しましょう。コミュニケーションがよりスムーズになるはずです。
外国人介護士へのNGなコミュニケーションの例を見ていきます。無理に英語を使ったり難しい日本語を使うことを避けましょう。
「外国人は英語を話せる」というイメージがあるかもしれません。しかし外国人介護士でも母国で使っていない場合も多く、英会話が苦手なことも珍しくありません。英語で話しかけられていても日本語よりも分からないという方も多いので、無理に英語を使うほうがコミュニケーションの妨げになるのです。「おはよう」「ありがとう」など、簡単な単語であれば、距離を縮めるひとつの方法として相手の母国語を覚えて使うことも、有効かもしれません。しかし仕事中・あるいは介護の専門的な話をする場面であれば、「わかりやすい日本語」を心がけるほうが、伝わるやすいでしょう。
外国人スタッフに対して「後輩だから」「相手の母国は、日本よりもフレンドリーに接する文化があるから」などの理由で、日本人の同僚よりもくだけた言葉で話しても良いと考える人もいます。しかし、それは間違いです。ため口を使ってしまうと差別だと捉えられてしまったり、意思疎通がスムーズにできなかったりします。
「このぐらい分かるだろう」と思ってため口を使うと、相手に意図しないことを連想させることもありえるのです。排他的なイメージを与えないためにも、言葉選びに注意すべきです。
外国人スタッフに対して敬意を払うつもりで、敬語や専門用語を使う場合もあるでしょう。他にも文化の違いを尊重するあまり丁寧な言葉で話す人もいます。
もちろん丁寧に話をすることは評価すべき点ですが、外国人介護士とのコミュニケーションの観点からすると、相応しくないケースもあります。
複数の敬語や専門用語を使うことは、相手を混乱させることにも繋がるのです。敬語や専門用語を使うとしても相手の理解の範疇に留めるようにしましょう。
外国人介護士へのNGな言葉遣いも見ていきます。以下のような話し方を避けるなら、相手との良いコミュニケーションを図れるでしょう。
外国籍の人を排除するような話し方を避けます。「我が国」のような相手と自分との間に境界線を設けるような表現を使わないようにしましょう。また文化の話をしているときに、「日本では」とか「あなたには分からない」と決めつけるような話し方も排他的なイメージを与えるので避けるべきです。
人格否定をする話し方を避けましょう。例えば特定の個人について話しているのに、「外国人スタッフは」とか「○○の国の人たちは」などのように話すなら、人格を奪い、個人を尊重しないことになります。
誰かについて話しているなら、名前を使って話すなど、誰について話しているのかはっきりとわかるようにしましょう。
他の文化について烙印を押すような話し方を避けます。他の文化をネガティブに表してしまう表現を使うなら、自分の文化は相手の文化より優れているという印象を与えかねません。
日本はアジアの中でも優れているなどのように優越感を与える話し方になるからです。日本以外のアジア人を差別していると感じさせないためにも、烙印を押す言葉を避けます。
固定概念がベースとなっている表現も避けるべきです。国民性が出ることがありますが、あまりにも強調しすぎるなら相手に苦痛を与える場合があるからです。
「○○人はこうだから」という偏見に基づく話し方を避けましょう。一般的に考えられている概念であっても、ネガティブなイメージに繋がらないか洞察しておくことをおすすめします。
日本ではお辞儀をすることが丁寧な敬意を示し、相手への感謝の気持ちを表す方法の1つであると理解しています。しかし外国人にとっては、顔や視線を合わせないことが失礼だと感じる人もいます。
相手の国の文化によって非言語コミュニケーションの方法が異なるため、相手が発する非言語的なメッセージや、こちらが発する非言語コミュニケーションがどのように伝わるのか把握しなければいけません。
言葉よりも相手に伝わったり、無意識のうちにトラブルを招かないためにも非言語的なコミュニケーションを意識しておきましょう。
日本語能力試験に合格できるほどの日本語力を身につけるためには、日本語を学べる学校に通うのがおすすめ。しかし、学校の授業料は決して安いものではありません。介護士を目指す外国人が多い東南アジアでは、若いうちから家族を養っているケースが多く、自己投資ができるほどの金銭的余裕がないと言います。
特定技能ビザによる外国人介護士の雇用をサポートするONODERA USER RUNは、フィリピン・ミャンマー・カンボジア・ベトナムに外国人介護士を育てる学校を持ち、2439名の在学者の授業料を無償化して教育を行っています(2020年3月時点)。介護士になりたいと志を高く持っている人財の芽を摘まないために、試験に合格するための教育だけではなく、来日後の就職先・生活支援までサポート。日本の施設へ、即戦力になる外国人介護士を派遣しています。
特定技能ビザ以外の制度でも外国人介護士を受け入れることはできますが、実習期間が必要であったり、あくまで就労目的ではなく本人の勉強目的であったりと、外国人介護士の能力はまちまちです。施設側で日本語を教えるには限界があるため、ONODERA USER RUNのように一貫したサポートを提供している会社に相談してみることがおすすめです。