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ミャンマーからの介護士を受け入れる動きが加速しています。この記事では、ミャンマーから人材を受け入れる際に利用できる制度やミャンマーの特徴、国民性などのほか、ミャンマーの人と仕事をする上で覚えておきたい内容をご紹介します。
日本国内の人材不足解消のため設立された在留資格。試験で日本語能力と介護技能が一定水準あると認められた上で入国し、介護事業所で5年間の就労が可能。
日本から海外への技能移転を目的とした制度。日本へ入国の際には日本語能力試験N3程度が望ましく(要件はN4程度)、入国1年後にはN3程度の日本語能力が要件です。介護経験に関しては、外国で同等業務に従事した経験があることなどが要件。
専門的な技術や知識を持つ外国人労働者の受け入れを目的とした在留資格。日本の介護福祉士養成学校を卒業して介護福祉士資格を取得すると、在留資格「介護」を取得でき、日本で永続的な就労も可能です。
外国人介護士を迎えるにあたって利用できる制度について、データともにまとめています。本格的に外国人介護士の雇用を検討している方は、ぜひご覧ください。
東南アジアに位置する国であり、2018年の人口は約5500万人。1948年に独立した国で、1989年までは「ビルマ」と呼ばれていました。首都はネピドーですが、最大の都市はヤンゴンです。もともと首都はヤンゴンとされていましたが、2006年にネピドーに移ったという歴史があります。
多民族国家のミャンマーですが、その約70%はビルマ人です。ほかに135程度の少数民族から構成されています。公用語はビルマ語ですが、そのほかにも40以上もの言語が存在します。このビルマ語は、文字の形が非常に可愛らしいともいわれている言語です。
ミャンマーの中央年齢は約28歳です。すなわち20歳代以下の若者が人口の半分以上占める国。非常に若く、将来への可能性を秘めた国といえるでしょう。
長らく軍事政権・独裁政治が続いてきたミャンマーですが、2015年にアウン・サン・スー・チー氏を筆頭に民主的な国として新しい一歩を踏み出しています。
ミャンマーの人材を介護士として受け入れるにあたり、どのような国民性を持つのかを知っておきましょう。
敬虔な仏教徒であるがゆえに先生や上司を敬うミャンマー人は、その指示には素直に従います。説明がなくても、素直に作業に取り組む傾向があります。このことから、ミャンマー人は真面目である、と評価されることが多いです。
ミャンマー人は親日家の人が多いため、日本人にとってはコミュニケーションが取りやすい傾向があります。
ミャンマー人にとって、親は絶対的な存在。そのため、親のいうことには素直に従います。例えば親が仕事内容に反対するとその意見に従うことも。このような背景から、長男や長女が大家族の家計を支えていることも少なくありません。
人口の約85%が仏教徒で、そのほかイスラム教やヒンズー教を信仰している人がいます。街中には非常に多くの「パゴダ」と呼ばれる塔状仏堂やヒンズー寺院、モスクなどを見ることができます。
仏教においては、各自がブッダの教えを守り、悟りを開くことを第一とした上座部仏教(旧名:小乗仏教)が信仰されています。大乗仏教と比べ、「戒律を守る」ことに熱心な信者が多く、男性は一生のうちに2度出家することが望ましい、とされています。また、パゴダなどでは瞑想にふける熱心な信徒を見ることもできます。
また、ミャンマーではお寺が教育の役割を担っており、貧しさから学校に行けない子どもも寺子屋で学べます。このことから、識字率は先進国並みの高さといわれています。
ミャンマーでは「チャット」という現地通貨が流通しており、日本円と比較すると「1チャット:0.078円(2021年1月20日時点)」となっています。
また、ミャンマーは長らくアジアの最貧国の1つと呼ばれ、実際に軍事政権がミャンマーを支配していた当時は海外企業からの投資なども難しく、厳しい経済状況が続いていました。しかし、2010年に国が民政移管されて以降は、海外へもオープンな政策方針を採るようになり、そこからミャンマーの経済成長が続いています。
とはいえ、ミャンマーの物価は現在でも日本と比較するとかなり安くなっており、ミャンマーはまだまだ成長段階にある国と考えられそうです。
2010年までの軍事政権下では、ミャンマーの最低賃金など給与体系はアジア諸国の中でも最低レベルでした。例えば、2010年当時のエンジニアの平均月給は、最貧国の1つとされていたバングラデシュの175米ドルに対して、ミャンマーは58米ドルと、その低さが抜きん出ていたことが分かります。また、当時の横浜市の平均月給は(エンジニア)は4,209米ドルとなっており、日本とミャンマーのエンジニアの平均賃金を比較すれば70倍以上もの差があったことは驚きです。
しかし、2011年に民主化が成立してからは海外企業からの投資が徐々に増大し、最低賃金の見直しなども定期的に行われており、2020年6月には1日当たり8,000チャット(約618円)への最低賃金の改正案が、ミャンマーの14の労働者団体が提出されました。
もちろん、日給600円台という現状は、日本と比較すると以前として非常に安いといえますが、2010年までの状況と比較すれば大幅な成長だということができるでしょう。
とはいえ、ミャンマーの最低日給が日本の最低時給よりも低いという現実を鑑みれば、ミャンマー国内で働くよりも、日本で外国人介護士など外国人労働者として従事して収入を得た方が、より効率的にお金を稼ぐことができると考えても不思議ではありません。
※参考サイト:JETRO「平均賃金(1)」(https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000187/700.pdf)
※参考サイト:アジア経済ニュース「《労使》東南ア、最低賃金改定で攻防 コロナ禍で凍結・先送り案も」(https://www.nna.jp/news/show/2062691#:~:text=%E3%83%9F%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%81%A7%E3%81%AF14%E3%81%AE%E5%8A%B4%E5%83%8D,%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E3%80%8D%E3%81%AB%E6%8F%90%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82)
ミャンマーではヤンゴン市を始めとして、都市部で急速な発展が遂げられており、例えばヤンゴンでは大型ショッピングモールが建設され、華やかで現代的なファッションに身を包んだ人々が買い物を楽しむ姿を散見できます。
しかし、ミャンマーはそもそも農業国であることに加えて、ミャンマー全体ではまだまだインフラ整備などが遅れているせいで、地方で若者の働ける場所がないことも問題視されており、特に都市部と地方部や農村部との間で極端な格差が生じていることも事実です。
実際、ミャンマーでは国民の多くが、国が定めている貧困基準に達しているとされており、国全体では貧富の差が深刻化していることを否定できません。
また、ミャンマーには豊富な観光資源がある一方、長らく軍事政権下にあったことで世界的なイメージ戦略が追い付いておらず、あまり環境客が訪れていないこともポイントです。
そのため、ミャンマーは今後の成長や発展への可能性も期待できる反面、まだまだ発展途上にある国であり、諸外国との連携や人材の育成など、あらゆる面で国全体が成長戦略を進めていくことが必要であると考えられています。
※参考サイト:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ミャンマー経済の現状と今後の展望 ~アジアのラストフロンティアとして注目されるミャンマー~」(https://www.murc.jp/report/economy/analysis/research/report_200318/)
※参考サイト:JETRO「新型コロナ感染第1波収束後の経済を読み解く(ミャンマー)」(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/86b4ef41f165b87f.html)
ミャンマー人を介護従事者として雇用する際には、いくつか注意点として覚えておきたい点があります。
素直な性格を持ち、仕事に真面目に取り組むといわれるミャンマー人ですが、逆に指示された内容に疑問があっても遠慮して質問や意見を言い出せない面もあります。たとえ問題があったとしても「できない」と言い出せないケースもあるため、気を配って進捗状況を確かめたり、疑問点などがないかどうか聞くことも必要でしょう。
ミャンマー人は、学校や家庭などで怒られた経験をあまり持っていないため、ミスをした時などは注意の仕方に気を配る必要があります。人前で怒鳴ってしまうと自尊心を傷つけてしまうためです。ただ単に叱るのではなく、ミスをした原因や改善のためにはどうすれば良いのかをしっかり順序立てて説明してあげましょう。
ミャンマーの場合、国民性が介護人材としての適正に合っていると考えられており、実際に外国人介護士として日本で働きたいと考えて、スキルアップに挑んでいるミャンマー人も少なくありません。
そこで、まずはミャンマーの介護人材育成状況について把握しておきましょう。
ミャンマーでは年上の人を敬い、家族の面倒をきちんと見るという文化が根付いており、可能な限りは自宅で家族が高齢者や要介護者の世話をするのが一般的です。
しかし、一方でミャンマーでは近代化に伴って高齢化へと国内が進んでおり、自宅だけでケアしきれなくなった人に対して、優れた介護士や看護師が求められているということも実情です。そのため、ミャンマーは社会的に介護や看護に携わる人材へのニーズが高い国といえます。
また、社会的にニーズが高いからこそ、自分も介護士や看護師として活躍しようと、勉強に励んでいる人も珍しくありません。
ミャンマーでは介護人材へのニーズが急激に高まっており、優れた環境で学びながらスキルアップを目指したいと考えている人が大勢いるとされています。そこで、日本のように介護分野や看護分野の環境が整っている海外で、介護士や実習生として働きながら、実地経験を積みたいと考えているミャンマー人がいることも事実です。
そのため、ミャンマーでは来日を目標として、外国人介護士に必要な日本語能力や介護の知識などを習得させようとする学校や企業が増えており、日本語の勉強はもちろん、日本ならではの文化や常識、介護の方法などを真剣に学ぶ人が増えています。
ミャンマー国内では、日本で外国人介護士として働くことを目指す人に、日本語を教える日本語学校も数多くあります。また、そもそも勤勉な国民性に加えて、親日家が多いミャンマー人は、日本語学習についても真剣に取り組んでおり、自分や家族の将来のために本気で学校へ通っている人が多いことも特徴です。
また、特に日本で外国人介護士として働くことを前提とした学校では、日本語だけでなく多方面な分野において独自のカリキュラムが構築されており、民間企業だけでなくミャンマー政府も一体となって、将来の優秀な介護人材を育成するために力を入れていることも重要です。
国として介護人材ニーズが高まっている中、日本で働きながら介護士としての経験を積みたいと考えるミャンマー人がいる一方、一定以上の知識や技術を習得しているミャンマー人の中には、日本に対して悪いイメージを抱いている人がいることも無視できません。
これには、かつてミャンマーから招いた技能実習生と日本人との間でトラブルが生じたり、悪徳業者が仲介に入って問題が起きたりした結果、インターネットやSNSなどで日本について悪い噂が広まったという背景があります。
しかし、それでも日本で働いて成長したいと意欲を持つ人は多く、日本人としてもミャンマーから人材を受け入れる場合は、彼らが適切な環境で学んでいるか、きちんとしたルートで日本へ紹介されたのかなど、正しく確認することが欠かせません。
日本で介護士として働き、経験を積みたいと考えるミャンマー人が増えた結果、ミャンマーでは最初から日本で介護人材として働けるように特化した教育プログラムを提供している機関が増えており、日本と同じ設備や器具を使った実習も行われています。
加えて、現地講師として日本人介護士が派遣されるなど、民間同士や官民一体の技術交流も盛んになっており、ミャンマーでの介護人材育成状況はこれからさらに発展していくことが期待されています。
ミャンマーの特徴や国民性、仕事をする上で覚えておきたいことなどについて説明してきました。外国人介護士を雇うと決めた場合、まずはどのような雇用制度があるのかを確認する必要があります。
どの国の人材を受け入れるかによって利用できる制度が異なりますし、制度や資格ごとにその目的は異なります。対象となる国や条件、目的などをよくチェックしておきましょう。